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法人税法の効果

自己株式を買い取った際、簿価を超える金額は「みなし配当」と言われ、源泉所得税の対象となることとされている。

 

10万円の額面の株式を個人から仮に20万円で買い取るとすると、経理上は単なる20万円の対価で自己株式を買い取っただけなのだが、ここで20万円まるまるお支払いになったとすると後で税務署さんからダメ出しをされることになる。

 

10万円は額面を超える部分として配当とみなされるため、20,420円源泉徴収して差額を手取り分として払い、2万円余りの方は翌月に税務署に納税しなければならないのだ。

 

法人の経理上は、自己株式を20万円として扱うしかないわけだが、法人税の申告上は、額面が10万円であるため、申告調整が必要となる。別表5の2の資本積立金が会計上の資本積立金と10万円狂ってくることになるわけだ。そのままだと貸借のバランスが合わなくなるため、同じ別表5の2の利益積立金も10万円減らしておかなければならない。

 

源泉所得税もあるし、決算書上と申告書上でこのような調整をしなければならないので、自己株式は少し上級項目である。

 

法人税法ではなくて、会社法でみなし配当を定めていたら、経理事務自体が20万円を10万円ずつに分けて経理することになったであろうが、法人税法は税金の計算上のことにしか効力を生じないので、経理を変える力はない。このような法人税法の効力がなかなかどうして、かえってややこしい企業会計と税務会計の差異を生んでしまうのである。

 

法律は、現実に効力を与える効力規定が存在しているが、法人税法には税金の計算のことしか書いていないということなのだ。