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帳簿を作ることの意味

 税理士って、帳簿を作ってくれるんでしょ。

 

 それは、ある意味、正解だ。

しかし、税理士の本当の使命は、次のように記載されている。

「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」(税理士法第1条)

 

わかりにくいけれど、「独立公正に、信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図る」と抜粋すると少しマシか。

脱税を指南することはできないけれど、偏らないで、信頼にこたえることこそ、私たちが求められていることなのだ。

 

私たちは、端的に言えば、用心棒のようなものだ。

お金で雇われ、クライアントに忠義を尽くす。

その忠義は、むやみにクライアントを甘やかすということではなく、自らの独立公正を堅持しつつ、クライアントを正しい方向へ導き、より高みを目指していただく行動によって尽くされることになる。

 

自ら独立公正を堅持するというのも、言うほど簡単なことではない。社会は日々進展し、技術も発達すれば社会通念も変遷し続けるから、その変遷の嵐の中でよいものを学び続け、クライアントにいいアドバイスを提言しなければ存在価値がないのだ。

 

個別具体的なものは個別の面談でお話しするとして、ここでは一つだけ、よくある誤解についてお話しておこう。

 

それは、帳簿を作ることに含まれる重大な意味である。

 

税理士が帳簿を作るのが仕事だと思っている方が非常に多いが、そうだとすると、帳簿を作らない税理士は仕事ができない税理士だということになるだろうか。それは大きな誤りである。私たちはもちろん帳簿に関するプロフェッショナルであり、お客様に指導するよりも自分で作ったほうがよっぽど早い。

しかし、だからと言って、すべて税理士に帳簿を作らせることが果たして現実的か。

 

①帳簿は日々の動きを表すものだが、四六時中クライアントのそばにいることはできない。そうすると、エビデンスのあるものだけを帳簿にすることになるが、そうすると真実の動静を網羅することは不可能であるから、帳簿が穴だらけになる。税理士は経験によってある程度をカバーすることはできるが、よいものになる保証は全くないといってよい。

 

②経営をする力量が育たない。創業の方に特に申し上げたいが、帳簿をつけるという、一見、くだらない作業が、どれだけあなたの資金繰りや利益向上戦略の立案の上で感性を磨くのか、という観点が欠けている。

 

貸借対照表を作るのは、確かに初心者には容易ではないが、そのために税理士がいるのだということに気付いてほしい。

容易ではないが、やってみるとそんなに難しいことではない。

財団法人富山県新世紀産業機構にコーディネータとして在籍しているのだが、最短で、たった2回の指導で確定申告書を自己作成してもらったことがある。簿記などということに一切かかわったことがない方であった。

 

これには理由があって、現在は昔と異なり、会計ソフトという便利なものがあるからだ。

まずは、弥生会計を購入してもらい、現金と預金だけを合わせてもらう。勘定科目など、最初は適当でよい。とにかく、残高を合わせること。この作業はボリュームだけの問題で、取引量がそう多くない創業の方なら、小学生でもできるレベルだ。

次は、売上伝票の入力と仕入伝票の入力。喫茶店などの飲食店を想像するとよい。コーヒーの注文伝票やレジで売上が立つし、野菜やコーヒー豆を買えば仕入が立つ。

少し難しいのが給料明細の入力と固定資産の入力。

弥生会計ならば給与明細も固定資産台帳もついている。振替伝票という便利なものに入力を一度すれば、二回目からはコピペで数字だけ入れ替えればよい。覚えることなんてほとんどない。

普通の素人が二回の指導でマスターしたのは、別におかしなことではないのである。

 

ここまでできるようになったら、最後に貸借対照表の見方をご教授しよう。

あなたは、一瞬で自分の会社の資金繰りと成功するためのKPI(Key Performance Indicator)を理解できる。

苦手だと取り組まないでいると、本屋さんでたくさん本を買って勉強するようなことが、ほんの一瞬でマスターできる。

この面白さは、ぜひ、一度体感してみるべきだと心から思っている。

 

役に立たない?

帳簿が役に立たないとおっしゃる人は本当に経営がうまい人だろうか。

別にプロにならなくていいのだ。自分の仕事に詳しくなるだけのことだ。

それが無駄なことなのだと本心から言える人はいるだろうか。