· 

創業する方へ

 長年、氷見の商工会議所で創業塾の講師をしている。

 

 仕事柄、数知れない創業者たちとともに人生を歩んできた。私が開業してはじめてお客様になっていただいた1号と2号の方はお二人とも健在である。かなりの資産家になられたと思う。

 

 会社の経営は、障害物競走によく似ている。違うのは、事前に予測できない事件が必ず起きるということだ。そして、その事件というのが時に地雷と呼べるくらいに危険なものであることも。

 

 経営者は、地雷を踏まないように気をつけながら、ゴールにたどり着かなければならない。この二つ、とっても大切なことだ。

 

①地雷を踏まない

 

 これは、リスクを事前に察知して回避することができる。地雷のほとんどはお金に関わるものと、法律に関わるものだ。

 法律に関しては、警察・消防・保健所・税務署・労基署・入国管理・裁判所等々という恐ろしい敵を相手にすることにだけしなければかなりリスクを低減できる。しかし、最近は民の声というものも結構おそろしい。お金と法律と民の声の三つになったという方がよいのかもしれない。基本は、人に憎まれるようなことをしなければよいのだから、世の中の仕組みを馬鹿にしないでしっかり勉強していればまあ、大丈夫だろうと思う。

 

②ゴールにたどり着く

 

 結構問題なのが、お金の問題だ。資金繰りという言葉を、創業者の方はぜひ覚えておこう。

創業のときに、資金を用意し、夢いっぱいに開業するわけだが、何やっていいかわからないまま、無為に3カ月くらい過ごしてしまう人が結構多いことに気をつけよう。創業資金は、サラリーマンをやめた無収入状態で自分の生活費と消えていく。気がついたら貯めたお金を食べちゃいました、なんてことになりかねない。

 毎日、パソコンを開いたり閉じたり、店の掃除をしたり、何かもがいていたとしても、結果が出なければ同じことである。早期に第一回目の収入をゲットすることがいかに大切かを、創業者は胸に刻みこむべきだ。創業資金はあなたが生活費に使ってしまってはいけないのだ。とにかく、狙いを定めて仕事を始めたのであれば、その狙いを必ずやり遂げて収入をゲットすること。その収入で手に入れたお金からコストを引いたお金だけがあなたの給料となる。これをはっきりと、くっきりと自分の脳裡に刻み込め。

 

 苦しいのはもちろんわかる。誰しもそうやって事業主となってきた。無から有を生むのだ。苦しくないわけがなかろう。

私は、創業塾では、最初の三カ月は寝ずに働け、とパワハラもどきのセリフを吐く。何でもいいから収入を手に入れないと、そのうち面倒くさくなる。人間、集中力がそんなに長続きするものではない。コンビニでアルバイトでもしてた方がよっぽど収入がいいじゃん、なんてせっかくの初心を捨ててしまうことになってしまう。

 

 諦めるなら諦めてもよい。別にそれだけが人生ってわけじゃない。ただ、あなたに問いたい。

それでよいのか?と。

今、それなりに企業をやっている人たちは個人法人、大きい小さい関係なく、数百万人いるわけだ。みんな最初から楽していたわけじゃない。あなたは、そこで諦めるという選択をするということをわかって諦める必要がある。その痛い思いをすることが、次の就職や次の起業に絶対に役に立つということを覚えておこう。

 

 ということで、別に何度失敗しても、命さえあれば再チャレンジはできる。しかし、チャレンジという言葉があらわすように、新しい起業をするということは必ず苦しいことなんだ。苦しいことを乗り越えたとき、あなたには第一回目の幸せが訪れる。

安易にお金を借りるんじゃない。お金はひとさまが下さるものをいただくのが正しい。

ひとさまがお金をくださるのは、あなたが何らかの価値を提供したからだ。

押しつけるのではなく、感謝される。感謝されることでお金をいただける。

それが売上というものなのである。

 

二回目・三回目の幸せがあなたを待っているよ。